企業にとって、従業員の方々にとって、退職金とはどのような意味があるのでしょうか? 「退職をしたことで支払われるお金」というのは、基本的な考え方にあると思います。
退職金の起源は、江戸時代の「のれんわけ」にあるといわれています。江戸時代、長い期間の丁稚奉公の年季が明けた丁稚に、「ご苦労様」といった功労・慰労の意味で、現物ののれんを渡した事が始まりといわれています。また、この現物ののれんが、後に営業権の譲渡という意味で「支店を出す権利」といった形に変わったようです。
時代は移り、高度成長期になると退職金の意味も多様に変化しました。どんどん物価が上昇し、それに伴い賃金も上昇するはずですが、企業は資金繰りや将来の経営等を視野に入れると賃金を急激に上昇させる事は容易にはできない状況になっていました。そんな時、従業員に対する有効な提案として、退職金がクローズアップされてきました。
この時代の退職金の持つ意味は、まず会社の必要性から、現在支払いきれない賃金をあとで退職金として支払う「賃金の後払い」という意味と、従業員には定年まで働けば、退職金をもらえて老後は安泰という「老後の生活保障」という2つの意味を持つようになりました。また、これは定年までいたら退職金をあげるよ!ということを意味し、社員が会社をやめないように「社員の囲い込み」という点でも有効でしたし、また定年を迎えた社員がまとまったお金をもらうことで「社員の円滑な新旧交代」をうながす役目も担っていました。
上記のような歴史の背景があり、現在では、退職金の意味は大きく次の「3つ」をあげることができます。
1.功労賞・報労賞
2.賃金の後払い
3.老後の生活保障
しかし、退職金をとりまく環境は時代とともに変わってきました。これからの時代にあった退職金は、どのような意味で必要になってくるのでしょうか?
退職金は実際には会社規模によりその総額は異なり、また、その算定方法も規模・時代により変化しています。現在の退職金はその変革期にあるといえ、年功序列であった人事・給与制度が多様に変革したことや、経済状況・雇用環境などから時代に合わなくなってきています。全体として、退職金制度そのものは縮小傾向にあるものの個々の会社に応じた考え方が新たに生まれています。
退職金の高騰―――資金不足
これまで多くの企業で退職金制度は基本給を連動させた制度を採用していました。しかしながら、基本給の上昇により、設計時の予想をはるかに上回る退職金を支払わなければならない企業が続出し、特に中小企業ではその資金不足が懸念されています。
適格年金―――平成24年3月31日をもって廃止
適格年金の数年後の廃止が決定している現在も、未だ適格年金に加入している企業も多いと思います。運用状況の悪化により、多額の積立不足が深刻化している「適格年金」。あなたの会社は大丈夫ですか?
昭和40年代の古き良き時代。高度成長期の日本で成熟した退職金制度―――この退職金制度も現在では時代の移り変わり、経済状況の変化とともに、様々な問題が浮き彫りになってきています。退職金制度とは、将来の退職時に支払う事を約束した「約束手形」のようなものです。たとえ問題があったとしても、すぐには表面化せず、退職時まで問題を先送りする事が可能でした。しかし今、問題をこれ以上先送りすることは出来ない、差し迫った時期にきています。
私ども「あおぞらコンサルティング」は、現行制度の問題点を浮き彫りにし、企業様にとって、従業員の皆様にとって、よりベターな制度となるようコンサルティングして参ります。